
ドミニカ共和国で実施した服育のワークショップ
いのち会議が、2025年10月11日に大阪・関西万博会場内にて、「いのち宣言」および「アクションプラン集」を発表。本記事では、いのちを「まもる」【宣言3-3】を市民目線で情報を共有し、消費や投資、日々の選択を通じて持続可能な社会をつくろうへのアクションプランの1つ「地球上のすべてのいのちをまもる装いを。責任ある生産と消費で、未来を紡ぐファッションを選ぼう」を紹介しよう。
ファッションプランナー・谷裕介さんの取り組み
ファッションの表層の美しさの背後にある「見えない現実」に向き合ってきた、ファッションプランナーの谷裕介さん。バングラデシュの縫製工場での過酷な労働環境、そして南米チリ・アタカマ砂漠に山積みされた不要衣料の“服の墓場”を目の当たりにし、ファッションは本来、個の美しさや自由の表現であるはずなのに、その陰で多くのいのちと環境が犠牲になっていることに深く心を揺さぶられ、先進国の大量消費と無自覚な選択に疑問を持つようになったという。
この問題に対して、ファッションプランナーとして、行政や企業と連携しながら「服育」の活動に取り組んできた谷さんは、服は単なる商品ではなく、誰かの手を経て、いのちの時間を費やしてつくられたものであり、その背景を知ることで、人々の「選ぶ行為」そのものが変わることから、全国各地で講義や講演を行い、こどもからおとなまで幅広い層に、消費の向こう側にあるストーリーを伝えてきた。
服が作られる現場の労働環境や、素材が育まれる自然の営み、そして廃棄される服の行方までを様々な形で伝え、現在も、講演や講義だけでなく、ボタンを用いて、廃棄された服を再構築するワークショップや、衣服の可能性を考える体験型展示などを通じて、「服育」としての学びの場を広げている。
参加者からは「買うときの視点が変わった」「ファッションの責任について初めて考えた」といった声が多く寄せられ、意識変容の一歩を実感しているとのことだ。
2050年を見据えた今後の活動
今後、2050年を見据えて、谷さんは、これまでの「服育」の活動を継続・深化させるとともに、ファッションとアートを掛け合わせた新たなアプローチにも挑戦したいと考えているそう。視覚芸術や映像、写真、身体表現などを通じて、服の「生と死」を感覚的に伝える場をつくりたいと考えている。
服が生まれ、使われ、やがて捨てられるまでの循環を、視覚や触覚で追体験できる物語を伝える。また素材や音、匂いなどを通じて、服のいのちの流れや人やモノを通じた死に対して直感的に感じられる展示を実践する予定だ。そして、その循環に潜むいのちの重さや、環境とのつながりを、より多くの人が直感的に理解できるように表現していく計画を持っている。
「つくる責任・つかう責任・いのちの尊さ」を伝える
いのち会議も、ファッションについて、消費財の枠を超え、暮らし方・生き方としてとらえ直す必要があると考えているとのこと。服は、人々のいのちの時間を包むもの。その一着がどこで、誰によって、どんな素材で、どんな意図でつくられたのか―その背景に目を向けることは、他者のいのちや地球のいのちに対する敬意の表明でもある。
さらに、大量の衣服が焼却処分されるという現実に向き合うことは、死生観とも深く関わってくる問題。いのちの終わりにどう向き合うかという問いを、衣服の行く末から問い直すこともできるだろう。
ファッションはただの流行ではなく、世界と共に生きる姿勢の表現であり、社会を変える力を秘めている。その可能性を信じ、いのち会議は、谷さんのようなファッションプランナーと連携し、服を通じて「つくる責任」、「つかう責任」、そして「いのちの尊さ」を伝え続ける活動を世界に広めていくとしている。
この機会に、ファッションプランナー・谷裕介さんの取り組みや、いのち会議の「いのち宣言」および「アクションプラン集」に注目してみては。
いのち会議:https://inochi-forum.org/
JICA「ドミニカ共和国での『ファッションと環境~服の旅人~』ワークショップの開催 講師:谷裕介さん、中江川力也さん」:https://www.jica.go.jp/overseas/america/plaza/1555922_23386.html
朝日新聞 withPlanet「ファッションと国際協力 ドミニカ共和国でユニホームを作る意味」:https://www.asahi.com/withplanet/article/15726032
(佐藤ゆり)